1980年代に日本に帰り、和紙と墨の組み合わせに本格的に取り組む。
作品7、8、9「原形シリーズ」素材和紙、墨によるミニマリズムな作品。
作品10、11 「扉シリーズ」素材和紙、墨。
白地に黒という墨の技法は形そのもののもつ美が強調される。さらにその形である墨の黒にこだわったのが作品7から10の黒のシリーズだ。
黒のシリーズは「みやび」の世界や白の世界が動的な世界であったのとは違い、静の世界だ。そして墨の黒には無限の階調がある。さらにその特質を追い求めたのが「雪山」「石と水」「流氷」「雲と月」「天体」などである。それは和紙独特のにじみなどを生かした作品であるが、従来のような筆で描いたものではない独自の技法が駆使されている。その結果、墨で描かれていても単なる黒色ではなく、白やグレーなど微妙な階調の色合いが生まれ、意図的にはできない今まで見たこともないような作品がつくられた。
1983年に当時東京で最先端のウエダ・ウェアハウスギャラリーで展覧会をした。それは日本の神道を題材とし、さらに抽象性を高めたものだった。
最大240cm四方の大きな作品群が画廊である巨大な倉庫の空間にひときわ映えた。
輝子はこの後、世界各国の古代文明発祥の地に興味をもち、文明の起源の地を訪ね歩いた。
1987年には中国にわたり石窟の仏像遺跡を見て回り、それらを墨で表現し大阪で石窟シリーズの展覧会を行った。
さらに1990年に東京の巨大なP3美術館で展覧会をしたが、それはエジプトの遺跡を題材としたものだった。ここにおける作品も幅約10m、高さ約3mの王家の谷ほか大作が並んだ。
さらに1995年にハイデルベルガー・クンストフェアラインでギリシャ、エジプトなどの古代文明を題材とした。ギリシャの作品群は、掛け軸化されたが絵そのものも高さが2.7mあるが高い天井からつり下げられ、それらが広い会場に並んだ。その展示の中を歩く体験は、ギリシャの遺跡を歩く体験に他ならない。
輝子は世界の神殿を訪ねたが、いずれも現在は荒涼とした風景が広がっているだけだった。
かつては豊かな水があり、緑があり人々が暮らしていた場所である。栄華を誇る文明もいつか滅ぶ。都市の文化は自然を忘れ、自然を破壊してきた。これからの世界のあるべき文化の姿とは何か。そのモデルは過去の日本の文化にあるのではないかと輝子は考える。1990年に宇・フォーラムKV美術館を設立するが、「宇」は宇宙を意味する。
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