U-FORUM MUSEUM
宇フォーラム美術館
スケジュール
展覧会情報
概要
平松 輝子
二紀 和太留
坂田 一男
ご連絡先・交通案内
■ 宇フォーラム・KV21 第57回展
望月厚介展 「FOR LAMINATING」表層→集積
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場所:
期日:
宇フォーラム・KV21 国立市東4-21-10
2014/11/6(木)〜11/23(日)
木・金・土・日のみ開館 PM1:00〜5:00
作品紹介
望月厚介

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■「表相として」FOR SUPERFICIAL 望月厚介 2014.11

二次元絵画を三次元の人体として例えるならば、その表面は文字通り「皮膚」であり、空間と人体を分ける「境界」でもある。この作品は自己の皮膚、例えば足の裏の皮膚や皺を写真に撮り、シルクスクリーンに転写、和紙に印刷したものです。従ってある意味で「自画像」でもある、否、「自足像」である。
現在の自分、その時点での自己の皮膚や皺であり、それまでの自己の時間でもある。
内蔵された黄色の蛍光灯は日本人という人種のシンボルとして提示している。

「亀裂」TRYANGLE RIFT
無論私の妄想であるが、「宇宙の誕生がビッグバンから始まった」とは、物理の世界では定説になっているが、もしかしたら宇宙の誕生、宇宙の始まりは「黒の亀裂」から始まったのではないかと想っている。
「黒」という二次元でも、三次元でもない茫漠としたイメージの中の「黒」、その「黒」が裂けたとき、生命が、宇宙が誕生するのではないかと考えている。
その「黒」の向こうに、生命が存在しているように想う。

「積層」FOR LAMINATING
版画の行為とは、版をもって「刷る行為」であり、絵画で言うところの「描く」ことである。単に「刷ること」とは何か?「刷る」行為に何の意味があるのか?それ自体単純な作業=労働であり、「イメージの具現化」のための行為でしかない。
但し、その行為こそが芸術の根源であり、「刷ることの意味」「生きることの意味」を問い直すことでもある。

望月厚介展に寄せて(1) 八覚正大(寄稿)  
まず惹かれたのは、「TRIANGLE RIFT」三作だ。黒い画面に、燃える三角の楔が打ち込まれたような。それが一つのものと、三つのTriと二つのTwinがあり、楔の色はオレンジ、赤と少し異なる。私は、その中のTriになぜかもっとも惹かれた。理由を……越えてだ。連想は、遠くにケネス・ノーランド、近くには東所沢駅のホームから見た対壁の何十もある雨の流れ落ちる錐形の跡だが、この作品は心に熱く打ち込まれて、なお整然としたものがある。そして中二階にさりげなく小型の作品もある。それは楔が少し萎れた感じで、針金のような細い亀裂から垂れ下がっている感覚。小品ながら見逃せない。ぶら下がった何か……磔のような。
その他、人間の皮膚を拡大し表相として映し出したもの、これも面白い。カメラのレンズを通すと、肉眼よりさらに黄緑が強く放射されている。DMにも、宇フォーラム美術館会報114号の巻頭をも飾っている作品だ。その他、LAMINATING系の作品は何度か観ていると下層が感じられてきたり、集積RG−25などは五枚の板絵でロボットの上半身のような愛らしさを感じさせる。もう一つ、階段の途中にある。黒い丸(太陽のような)二作、特に右の、亀裂に落ち込んだのかあるいはそこから(あの)エネルギーが放出し出されているのか――のような作品は小品ながら怖く、また命を感じさせるものであった。

望月厚介展に寄せて(2) 平松朝彦 
望月さんは、多摩地域のみならず世界の展覧会に参加し活動されている今や旬の現代美術のアーチストだ。抽象的なシルクスクリーン版画やインスタレーションにも取り組まれていることはいまや希少、貴重な存在といえる。今回の展示は回顧展というようなことになるのだろうか。
私が思う見どころは黄色いライティングによる「表相」やの電光掲示板による福島原発事故のメッセージ「無題」だ。2011年、当時、巷では放射能の危機が喧伝されていたが、政権が変わると世の中は事故原因が今だにわからないにもかかわらず、まるで事故などなかったかのようだ。少なくとも津波による電源喪失ではなく、非常用冷却装置の不備、無操作ミスの可能性が高い。こうしたインスタレーションは日本ではほとんど見る機会はない。
一方、平面作品もユニークだ。小品だが「メルティングプール」「メルティングポンド」は2011年の東日本大震災による福島原発事故の前年に描かれた作品である。赤い溶けた原子炉は原子炉事故の姿を象徴し、あまりに不気味だ。この事故の前から原発事故を予想する本がいくつも出版されていたが絵による予測は前例がない。このような社会にたいする疑義と美術の関連はもっとあっていいと思う。
最近作のシルクスクリーンは版画とはおもえない分厚いマチエールだ。坂田一男のいう「人の真似をするな」という言葉の意味は、単なる言葉どおりの意味を超えて「自分でマテリアルを開発しろ」といっているようにも思う。芸術は自己表現などというが、それではなんでも芸術になってしまう。自分で独自のマテリアルを開発すれば他人は真似することかできない。今まで当館で展覧会をした作家たちはいずれも自分なりの表現というか自分しかできない表現に挑戦されているが望月さんも例外ではない。
様々のバリエーションの見ごたえのある展覧会が開かれた。


望月厚介
略歴主な個展・グループ展

1948年 静岡生まれ
1992年 第3〜5回TAMAうるおい大賞美術展('92年審査員奨励賞買い上げ/95年TAMA大賞買上げ)(パルテノン多摩)多摩市・東京
      第1回URBAN井・1(渋谷パルコパート3・全国パルコ巡回展)渋谷・東京
      第1回〜3回 国際ミニプリント展('92〜'95年受賞)(ナパアートセンター)ユタ州・USA
1993年 TAEJON万国博'93招待出品国際版画・素描展  テジョン市・韓国
      「望月厚介」展(福島県矢吹町ふるさとの森芸術村・企画展示室)矢吹町・福島県
1995年 第3回NICAF`95国際コンテンポラリーアートフェアー(パシフィコ横浜)横浜
      CWAJ現代版画展('92〜'95.2009年)(東京アメリカンクラブ)東京
      現代日本絵画展(宇部市民ギャラリー)宇部市・山口県
1996年 「版」展(養清堂リフレクションギャラリー)銀座・東京
      第3回さっぽろ国際版画ビエンナーレ(北海道立近代美術館)札幌・北海道
1998年 個展「残された領域」(六花亭ギャラリー招待企画)帯広・北海道
      第9回バルナ国際版画ビエンナーレ(バルナ美術館)バルナ・ブルガリア
      ふくみつ記念版画大賞展'98〜02年(部門賞受賞)(福光美術館)福光市・富山県
1999年 第1回トロワリピエール国際版画ビエンナーレ ケペック・カナダ
      エジプト国際版画トリンナーレ(〜'02)(カイロ美術館)カイロ・エジプト
2000年 第17回「日本−現代のヴィジョン」展招待出品(スルメールミュゼ)スルメール・フランス
      「アジアン・アートナウ」(ラスベガスアートミュージアム)ネバダ州・USA
2002年〜・11年 第5回、第8回高知国際版画トリエンナーレ(井野町紙の博物館)井野町・高知
      あおもり国際版画トリエンナーレ(青森市民美術館)青森市・青森県
2003年 第7回ハンガリー国際版画ビエンナーレ 招待出品(ハンガリー美術館巡回展)ハンガリー
      第12回ソウル国際版画ビエンナーレ(スペースソウル)ソウル・韓国
      「温度差7℃」(SAKURA FACTORY/BOX・KIOKU)青梅市・東京
2004年 CIGE中国国際画廊博覧会(北京国際貿易センター)北京・中国
      「風景の心電図」展(SAKURA FACTORY/BOX・KI0KU)青梅市・東京
2005年 CIGE中国国際画廊博覧会(北京国際貿易センター)北京・中国
      SIPAソウル国際版画アートフェアー(ソウルハンガラム美術館・韓国)
      「里山と在る」展(SAKURA FACTORY/ギャラリー繭蔵)青梅市・東京
      「PRESENT FOR YOU」所蔵作品展(町田国際版画美術館)町田市・東京
2007年 SIPAソウル国際版画アートフェアー(ソウルハンガラム美術館)ソウル・韓国
2008年 「韓中日国際美術家一別」展(上海NARARA STUDIO)上海・中国
2009年 「lMPRINT」現代グラフィックアートコレクション(マガシネットギャラリー)スウェーデン
      「2009 BEIJING SOGO INTERNATIONAL ART FAIR」(SOGOデパート)北京・中国
      「TITE OF EXHIBITION」韓中日国際美術家展(JUNGWOO-GALLERY)ソウル・韓国
2010年 第2回青森国際版画トリエンナーレ(青森国際芸術センター)青森市・青森県
      「EDITION」プサン国際版画展(BEXCOアート国際センター)プサン・韓国
      「IBERICA国際オープンアートコンテスト」最優秀賞受賞(NY COO GALLERY)USA
2011年 「ベルギー・日本国際版画交流展」京都芸術大学ギャラリー@KCUA京都
      「TO」BREAK−日本とドイツを繋ぐ展 ベルクラム・ドイツ
      第16回セルベイラ国際版画ピエンナーレ(セルベイラ・ポルトガル)
      第8回高知国際版画トリエンナーレ(井野町 紙の博物館)井野町・高知県
      「熔融された二つの次元」二人屋岩崎博物館企画 岩崎ミュージアム山手町・横浜
2012年 第6回DOURO国際版画ビエンナーレ招待出品 アリジオ・ポルトガル
      「版の境界線:変容と再生」岩崎博物館314回企画(岩崎ミュージアム)山手町・横浜
      第10回アートプログラム青梅「存在を超えて」(青梅市立美術館)青梅・東京
2014年 「HANGA」ベルギー・日本国際版画交流展(セントニクラス市立美術館)ベルギー
      「アートアイランズ国際現代美術展」(旧甚の丸低・波浮港)伊豆・大島

主な収蔵先/町田国際版画美術館、東京多摩市、羽村市松林小学校、福島県矢吹芸術の村企画
展示室、帯広六花亭株式会社、ワルシャワファインアートアカデミー、極東産業株式会社、韓国版画
協会、横浜市鶴見富士電機病院、農業法人藤野クラブ 他


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